バスケットボールのスコア、得点のスコアリングだけでなく、アシスト、リバウンド、スチール、ファウル、フリースロー、ターンオーバー等のプレーを入力し、STATS / スタッツ(統計データ)として記録するためのサイトです。

宮地陽子のスタッツ四方山話・第3回 ロビンソンの71点とコービーの60点

 アメリカを拠点に、バスケットボールライターとして活躍中の宮地陽子さんのコラムをお届けします。第3回目は ロビンソンの71点とコービーの60点 です。
宮地陽子さんの略歴、スタッツの解説を巻末に掲載しています。こちらもご覧下さい。


試合を見るファンの立場からすると、スタッツは、ただ試合を見るだけでは気づかなかったような新たな視点を教えてくれる魔法の数字だ。試合の前や後でも、数字を見ているだけで色々と分析したり、想像したりして楽しめるという人も多くいるのではないだろうか。
試合をする側にとってのスタッツは、コート上でのプレーを数値で表したものであり、実力の指標でもある。次はさらにいい数字を残そうと励みになることもある。また、契約によってはシーズン通して特定のスタッツ基準に達したかどうかでボーナスがもらえることもある。決して数字がすべてではなく、個人スタッツにこだわりすぎることはチームプレーにとって弊害となることもあるとはいえ、選手にスタッツをまったく気にするなというほうが無理というものだ。得点王などの個人タイトルがかかっていたらなおさらだ。
たとえば、今からさかのぼること22年余り前、1994年4月のこと。このシーズンは、シャキール・オニール(当時オーランド・マジック)とデビッド・ロビンソン(サンアントニオ・スパーズ)はレギュラーシーズン最後まで、激しい得点王争いを繰り広げていた。それぞれレギュラーシーズン最終戦1試合を残し、NBA2年目、22歳のオニールが平均29.313点、NBA5年目で28歳だったロビンソンが平均29.266点。なんと、その差わずか0.047点だったのだ。ざっと計算して、最終日にロビンソンがオニールの得点を4点上回れば逆転する計算だった。
結果はオニールが32点。そしてロビンソンは、なんと71点の自己最多得点を記録した。当時でリーグ歴代7位タイ、現時点でも歴代8位タイの記録だ。
その結果、ロビンソンが平均29.8点、オニールが平均29.3点で、ロビンソンがこのシーズンの得点王となった。
この試合でロビンソンが打ったシュートは41本(成功数は26本、成功率63.4%)。このシーズンのロビンソンの平均FG試投数は20.7本だったから、通常の試合の倍近い本数のシュートを打ったことになる。しかも、それに加えて打ったフリースローが25本(うち18本成功)だったのだから、実際に打ったシュートはさらに多かったわけだ。
この時、スパーズはすでに順位が確定しており、言ってみれば勝敗はどうでもいい試合だった。その試合で44分も出場し、41本のシュートを打つというあからさまに得点王狙いをしたことを批判する声もあった。オニールも、ロビンソンが最終戦で、意識して得点王を狙いに行ったことが気に障ったようだ。この日、ロビンソンが71点あげたことを聞いたオニールは言った。
「彼(ロビンソン)が毎回シュートを打つようなオフェンスをしていたと聞いた。もし、うちでそれをやっていたら、俺だって70点入れた。そのやり方は気に入らないね」
後に、自伝”Shaq Talks Back”でも、オニールは書いている。
「まるで、クリッパーズ(スパーズの対戦相手)のコーチ、ビル・フィッチが、彼が僕に勝つために、好きなだけ得点を取らせたようだった。少なくとも、自分にはそう見えた。あれはバスケットボールのためになるやり方だったのだろうか?」
実は、高校時代をサンアントニオで過ごしたオニールは、ちょうど同じ頃にスパーズに入ったロビンソンに憧れていたことがあった。しかし、一度サインをもらおうとしたときにぞんざいに扱われて、いつかコート上でやっつけてやろうと思ったのだという。そんな因縁もあっただけに、シーズン最終日で得点王争いで敗れたことは悔しかったはずだ。
もっとも、ロビンソンによると、最終戦で得点を狙いに行ったのは、彼自身の考えではなく、チームメイトたちからシュートを打つように言われ、パスを入れてもらったからだったという。試合後、ロビンソンはこう言っている。
「チームのリーダーとして、僕は常に試合に勝つことを第一に考えている。でも、今夜は、チームメイトたちが僕にシュートを打ってほしがっていた。試合が始まったら、攻撃のたびに僕にボールを入れようとしてくれたんだ」

それから20年余たち、同じように、チームメイトたちが一人の選手に得点を取らそうとボールを集めた試合があった。これもシーズン最終戦。ロビンソンのときと違ったのは、得点タイトルも何もかかっていない試合だったことだ。それでも、一人にボールを集めた理由があった。
今年4月13日にロサンゼルスのステープルズセンターで行われたロサンゼルス・レイカーズ対ユタ・ジャズ。この試合は、20年間、レイカーズのスーパースターとして、リーグ随一のスコアラーとしてチームやリーグを牽引してきたコービー・ブライアントにとって、現役最後の試合だった。自分より2回り近く若いチームメイトたちの中で、ブライアントはシュートを打ち続けた。若いチームメイトたちも彼のパスを入れ続けた。コーチも、そして、会場を埋め尽くしたファンも、みんながそれを望んでいた。それこそ、ブライアントの最後の試合にふさわしいと思っていたからだった。
ブライアントもその思いに応え、身体中に故障を抱えている選手とは思えないプレーで60点をあげた。37歳、現役最後での試合で、自己5番目に多い得点をあげたのだった。
試合後、ブライアントは「ずっと(自分一人だけで攻めずに)パスしろと言われてきた自分だけれど、最後にパスするな、シュートをしろと言われた」と笑った。
得点を記録として狙うことは、試合の中では意味のないことなのかもしれない。オニールが憤慨したように、バスケットボールのためにならないと考える人もいるだろう。
しかし、時として、数字にこだわってもいい試合もある、と思う。特に、それがチームメイトやコーチたちからの敬意から出たこだわりであれば──。

第4回目は、10月下旬を予定しています。お楽しみに。


宮地陽子さん略歴
バスケットボールライター。ロサンゼルス近郊在住。NBAやアメリカで活動する日本人選手、FIBAワールドカップなどの国際大会を取材し、Sports Graphic Numberなどの雑誌や、NBA Japan, Web Sportivaなどのウェブサイトを中心に執筆活動中。著書に『The Man ~ マイケル・ジョーダン・ストーリー完結編』(日本文化出版)、編書に田臥勇太著『Never Too Late 今からでも遅くない』(日本文化出版)がある。

*スタッツ/STATS:通常の得点、ファウルはもちろん、スコアシートからは拾えない、リバウンド、アシスト、ターンオーバー、スティール、ブロックショットなどの記録のこと。
英語のStatistics・統計学の略語STATSに由来。

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