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宮地陽子のスタッツ四方山話・第4回 NBAの流行、3ポイント・シュート① 3Pシュートは本当に増えているのか

 アメリカを拠点に、バスケットボールライターとして活躍中の宮地陽子さんのコラムをお届けします。第4回目は NBAの流行、3ポイント・シュート① 3Pシュートは本当に増えているのか です。
宮地陽子さんの略歴、スタッツの解説を巻末に掲載しています。こちらもご覧下さい。


NBAにも流行がある。むしろ、30チームという閉じられた世界での戦いだけに、優勝チームなど、成功しているチームの戦術はリーグ中のチームから真似されることが多い。そして、最近のNBAの変化として、よくあげられるのは3ポイント(以下3P)シュートの増加だ。その象徴的な存在が、この数年でリーグのエリート・プレイヤーとして台頭してきたゴールデンステイト・ウォリアーズのステフィン・カリー。いつでも、どこからでも高確率で3Pシュートを決める能力を備え、リーグ中のディフェンスをひっかきまわしている。何しろ、たとえバックコートにいるときでも、ディフェンスが一瞬でも気を緩めると、軽々とシュートを決めてくるのだから、これほどの脅威はない。昨シーズン、カリーが決めた3Pシュートの数はシーズン通算で402本。これは、NBA新記録であるだけでなく、カリー自身が前のシーズンに記録した前最多3Pシュート成功数(286)を118本上回る大幅な記録更新だった。昨季、チームとして一番3Pシュート成功数が少なかったミルォーキー・バックスの通算成功数は440本。カリー1人でバックスの1チーム分に近い3Pを決めたことになる。もちろん、むやみに打っていたわけではなく、成功率の45.4%はリーグ2位の確率だった。ちなみに、確率でカリーを上回ったJJ・レディック(ロサンゼルス・クリッパーズ)が昨季通算で打った3Pシュート数は421本。これでも、レディックは1試合平均5.6本の3Pを打っている。カリーはとはいえば、1試合平均で11.2本の3Pシュートを打ち、平均5.1本を決めている。
確かに、カリー個人の3Pシュート力が歴史的にみても驚異的であることはわかったが、果たして、リーグ全体でも3Pシュートは本当に増えているのだろうか。歴史的に特別な選手の登場で、増えたような印象を受けているだけではないのだろうか。
というわけで、リーグ全体の数字を調べてみた。昨シーズン(2015-16シーズン)、NBA全体での3Pシュート試投数は59,190本、そのうち、成功数は20,953本だった。これが、3年前の2012-13シーズンだと試投数49,067本で成功数は17,603本、さらに3年さかのぼって2009-10シーズンでは試投数36,395本、成功数12,693本だった。どのシーズンも、リーグ所属のチーム数が30チーム、1チームあたりのシーズン試合数が82試合という条件は変わらない。つまり、全体の試合数は1230試合と変わらないのにも関わらず、3Pシュートは試投数も、成功数も、ともに着実に増えている。

【表1】NBA:3Pシュート数変遷
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表1を見てもらえばわかるように、面白いことに、リーグ全体での3P成功率自体はそれほど上がっているわけではない。つまり、3Pの技術が特別に進歩しているというわけではないのだが、打つ数も、決める数も2~4割と、大きく伸びているのだ。

もっとも、3Pシュートの数を比較しただけでは、戦術の中で3Pシュートの割合が増えているかどうかはわからない。試合のテンポが上がり、攻撃回数が増えれば、それだけ3Pシュート数も伸びてくる。その点を検証するために、同じシーズンのFG試投数、FG成功数を調べて、その中で3Pシュートが占める割合を出してみた。

【表2】NBA:フィールド中の3Pシュートの割合
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表2を見てもらうとわかるように、近年はフィールドゴール数が増加傾向にあり、それだけ試合全体のテンポが上がっていることがわかる。一方で、フィールドゴール全体の中で3Pシュートが占める割合も伸びており、単に攻撃回数が増えたために3Pシュート数が増えただけでなく、試合の内容として3Pシュートが増えていることがわかる。それだけ、3Pシュートが重要視され、戦術の中で大きく組み込まれるようになったことを意味している。

ここでは7年前、4年前のシーズンを取り上げたが、さらにさかのぼり、1997-98シーズン、つまり、多くのNBAファンを魅了したマイケル・ジョーダン率いるシカゴ・ブルズの2度目のスリーピート達成のシーズンの3Pシュート数を調べると、さらに顕著だ。何しろ、このシーズンに一番多く3Pシュートを打っていたヒューストン・ロケッツでも試投数1670本、一番多く決めていたシアトル・スーパーソニックス(現オクラホマシティ・サンダー)でも成功数620本で、これは昨季(15-16シーズン)の各チームの数と比べると、ロケッツより3P試投数が少ないチームはわずか6チーム、ソニックスよりも3P成功数が少ないチームはわずか7チームだった。ジョーダンのブルズはといえば、リーグの真ん中ぐらいで、3P試投数は962本、成功数は311本だった。勝つための戦術も大きく変わってきたことがわかる。
来月も3Pの話を続けます。

第5回目は、11月下旬を予定しています。お楽しみに。


宮地陽子さん略歴
バスケットボールライター。ロサンゼルス近郊在住。NBAやアメリカで活動する日本人選手、FIBAワールドカップなどの国際大会を取材し、Sports Graphic Numberなどの雑誌や、NBA Japan, Web Sportivaなどのウェブサイトを中心に執筆活動中。著書に『The Man ~ マイケル・ジョーダン・ストーリー完結編』(日本文化出版)、編書に田臥勇太著『Never Too Late 今からでも遅くない』(日本文化出版)がある。

*スタッツ/STATS:通常の得点、ファウルはもちろん、スコアシートからは拾えない、リバウンド、アシスト、ターンオーバー、スティール、ブロックショットなどの記録のこと。
英語のStatistics・統計学の略語STATSに由来。

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