バスケットボールのスコア、得点のスコアリングだけでなく、アシスト、リバウンド、スチール、ファウル、フリースロー、ターンオーバー等のプレーを入力し、STATS / スタッツ(統計データ)として記録するためのサイトです。

宮地陽子のスタッツ四方山話・第5回 NBAの流行、3ポイント・シュート② 3Pシュートが増えた理由

 アメリカを拠点に、バスケットボールライターとして活躍中の宮地陽子さんのコラムをお届けします。

第5回目は NBAの流行、3ポイント・シュート② 3Pシュートが増えた理由 です。宮地陽子さんの略歴、スタッツの解説を巻末に掲載しています。こちらもご覧下さい。


NBAの流行、3ポイント・シュート② 3Pシュートが増えた理由

 先月のコラムで、NBAにおいて、3Pシュートの試投数や成功数、そしてフィールドゴール全体の中での3Pシュートの割合がすべて増えていることを検証し、3Pがオフェンスの中で重要な位置を占めるようになってきたことを書いた。

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 それでは、なぜ3Pは増えたのだろうか。その最大の理由として、NBAにデータ分析が浸透してきたことがあげられる。  NBAでは、最近10年余りで”アドバンスド・スタッツ”が用いられるようになってきた。平均得点や、平均失点、フィールドゴール成功率という、ボックススコアを見ればすぐにわかるスタッツを基本スタッツとすると、それを、さらに一歩進めて、計算して割り出したスタッツがアドバンスド・スタッツだ。

 中でも、オフェンス効率とディフェンス効率という指標は、この10年でリーグに浸透し、今では普通に使われるようになったスタッツだ。  オフェンス効率とディフェンス効率という概念は、元はといえば、「バスケットボール界のビリー・ビーン(*1)」とも呼ばれるディーン・オリバーが、攻撃のテンポが違うチームや、違う時代の選手を比較することができる統一の基準として考え出した。

*1 : ビリー・ビーンは大リーグに統計学を持ちこんだオークランド・アスレティックスのGM。マイケル・ルイス著の『マネーボール 奇跡のチームをつくった男』や、その本を元にして制作された映画『マネーボール』で描かれている。

 バスケットボールにおけるアドバンスド・スタッツ初期のバイブルとも言われるオリバーの著書『バスケットボール・オン・ペイパー(理論で見るバスケットボール)』(2004年出版)で、このオフェンス効率とディフェンス効率が紹介されると、間もなくリーグ中に浸透していった。  簡単に説明すると、100回あたりの攻撃で何点をあげたかを示すのがオフェンス効率で、100回あたりのディフェンスで何失点したかを示すのがディフェンス効率。総得点や総失点をオフェンス回数(ディフェンス回数)で割って100をかければ出てくる(*2)

*2 : チームのオフェンス回数やディフェンス回数は映像で見て数えるわけではなく、オリバーは、ボックススコアの数字を使って計算する数式を考え出しているのだが、今回はその説明は省略。

 こうやって違う土壌のものを比較することができる数値が浸透したことによって、単に選手やチームを比べるだけでなく、シュートの種類による効率についても考えられるようになった。たとえば、2Pシュートを50%の確率で決めたとするとオフェンス効率は100点となるが、これが3Pシュートなら、33.4%の確率で決めればオフェンス効率は100点を僅かに上回る。

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 昨シーズンのNBA全体の3P成功率は35.4%で2P成功率は49.1%だったことから考えると、NBAにおける一般論として、2Pより3Pを多く打ったほうが効率よく得点が決められることになるわけだ。逆にディフェンスの立場から考えると、いかに相手の3Pシュートを決めさせないかということが重要になってくる。  もちろん2Pシュートがまったく必要ないというわけではない。たとえば、ゴール下の確率の高いシュートは3Pと同じぐらい、場合によってはさらに上回るオフェンス効率になる。一方で、3Pラインから一歩中に入ったぐらいの位置から打つ長めの2Pシュートは、一番効率が悪いシュートだと言われるようになった。

 この数年、サイズに関係なく3Pを決められることが必要なスキルとされるようになったのも、この考え方からくる。そのため、『ストレッチ4』(3Pシュートを決める能力を持つパワーフォワード)というポジション概念も生まれた。ダーク・ノビツキー(ダラス・マベリックス)のようなオールスター選手だけでなく、たとえば、ライアン・アンダーソン(ヒューストン・ロケッツ)や、チャニング・フライ(クリーブランド・キャバリアーズ)のような、長身で外から決められる選手が重宝されるようになってきた。

 今シーズンは、その考え方がセンターにまで広がるきざしがある。かつてはインサイドを主戦場としていたセンターたちもが、シュートレンジを広げて3Pを打ち始めているのだ。たとえば、メンフィス・グリズリーズのマルク・ガソルは、NBAに入ってから昨季まで8シーズン、569試合で打った3Pシュートは66本、そのうち決めたのはわずか12本だったが、今シーズンは、開幕から14試合が終わった11月23日時点で、早くも50本の3Pを打ち、8シーズン分の合計を上回る21本の3Pを決めている。ガソルだけではない。ブルックリン・ネッツのセンター、ブルック・ロペスにいたっては、昨季まで8シーズン、487試合で打った3P数は31本、決めたのが3本と、どうしても打たなくてはいけないときしか3Pを打ってこなかったのだが、今季は、開幕から12試合を出場した11月23日時点で、打った数が66本で成功数は23本と、3Pを武器とし始めている。

 こうやって順を追って3Pが浸透した理由を考えてみると、NBAの3P革命は、単にステフィン・カリーのような特別なシューターが出てきたから起こったわけではなく、むしろ、3P革命が起きたからこそ、カリーのようなスター選手が誕生したということがわかる。

第6回目は、12月下旬を予定しています。お楽しみに。

 


宮地陽子さん略歴 バスケットボールライター。ロサンゼルス近郊在住。NBAやアメリカで活動する日本人選手、FIBAワールドカップなどの国際大会を取材し、Sports Graphic Numberなどの雑誌や、NBA Japan, Web Sportivaなどのウェブサイトを中心に執筆活動中。

著書に『The Man ~ マイケル・ジョーダン・ストーリー完結編』(日本文化出版)、編書に田臥勇太著『Never Too Late 今からでも遅くない』(日本文化出版)がある。

*スタッツ/STATS:通常の得点、ファウルはもちろん、スコアシートからは拾えない、リバウンド、アシスト、ターンオーバー、スティール、ブロックショットなどの記録のこと。 英語のStatistics・統計学の略語STATSに由来。

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