バスケットボールのスコア、得点のスコアリングだけでなく、アシスト、リバウンド、スチール、ファウル、フリースロー、ターンオーバー等のプレーを入力し、STATS / スタッツ(統計データ)として記録するためのサイトです。

宮地陽子のスタッツ四方山話・第8回 ディフェンスはスタッツで測れるのか?① ~渡邊雄太、A10オール・ディフェンシブ・チーム入り

 アメリカを拠点に、バスケットボールライターとして活躍中の宮地陽子さんのコラムをお届けします。

第8回目は ディフェンスはスタッツで測れるのか?① ~渡邊雄太、A10オール・ディフェンシブ・チーム入りです。

宮地陽子さんの略歴、スタッツの解説を巻末に掲載しています。こちらもご覧下さい。


ディフェンスはスタッツで測れるのか?① ~渡邊雄太、A10オール・ディフェンシブ・チーム入り

 アメリカ大学バスケットボールの最高峰、NCAAディビジョンⅠのジョージワシントン大でプレーしている渡邊雄太が、所属カンファレンス、アトランティック10カンファレンスのオール・ディフェンシブ・チームに選ばれた。毎年、複数のチームをNCAAトーナメントに送り出すレベルのA10カンファレンスに所属する14チームの選手たちの中で、ディフェンス力がトップ5人に入ると評価されたのだ。
 今シーズンの渡邊は、ほとんどの試合で相手のエース・ガードをマークしていた。206cmの長身でありながら、フットワーク、反射神経を生かして自分より20~30cm低いガードの選手を追いかけ、長い手足で相手のプレーを邪魔し、なみいる点取り屋たちを平均より低い点数に抑えていた。体力的には楽なことではなく、時には自分のオフェンスを犠牲にすることもあったが、それでも、渡邊が相手エースを抑えたために勝てた試合も多かった。

渡邉

 去年3月、NIT(全米招待トーナメント)の2回戦では、モンマス大のエース・ガード、ジャスティン・ロビンソンをマークし、6点に抑えた。ロビンソンの昨季平均得点は19.3点で、6点はシーズン最低得点だった選手だ。渡邊のこのディフェンスでの活躍があり、ジョージワシントンはモンマスに勝利。その後も勝ち進み、NIT優勝を果たしている。
 今シーズンに入ってからも、渡邊はディフェンスでチームを勝利に導いてきた。たとえば1月5日の対デイビッド大戦では、今季のカンファレンス得点王となったジャック・ギブスを前半僅か3点に抑え、試合終盤ではファウルトラブルもあって続けて得点を取られたが、それでも平均点より6点以上低い16点に抑えている。この試合後、デイビッドソンのヘッドコーチ、ボブ・マキロップは「(渡邊は)ジャックに対して”disruptive”(混乱させる、崩壊させる、の意)だった」と、渡邊のディフェンスによってギブスがいつものような攻撃力を発揮できず、チームとして対応する必要があったと語っている。
 この試合後、ジョージワシントン大の暫定ヘッドコーチ、モリース・ジョセフも、渡邊について「きょうの試合に勝てたのは彼のおかげだ」と称賛。「昨季のNIT(全米招待トーナメント)でも、彼はジャスティン・ロビンソンを進んでディフェンスした。彼はそういうチャレンジを楽しんでいる」と語っていた。

 しかし、試合を見ていれば一目瞭然でわかるような渡邊のディフェンス力も、試合のボックススコアでは、マッチアップした相手のFG成功率や得点以外で測ることは難しい。渡邊の今季平均スティールは1.3本、ブロックは1.1本、ディフェンス・リバウンドは4.1本。どれもずば抜けた数字をあげていたわけではなく、どのスタッツもカンファレンスの上位5位以内には入っていない。一番よかったブロックでさえ、カンファレンス8位だった。
 それでも、オール・ディフェンシブ・チームに選ばれたのは、実際にジョージワシントンと対戦した相手チームのコーチたちが、渡邊のディフェンスによってどれだけ苦しめられたという証でもあった。スタッツだけではない、対戦相手の目として彼のディフェンス力を評価したわけだ。

 元々、ディフェンスはバスケットボールのスキルの中でも、スタッツで表しにくいことのひとつだ。以前から指針とされてきたスティールやブロックは、確かにディフェンスのスキルの一部だが、すべてではない。試合を通してみると、スティールやブロックをしなくても、オフェンス選手に抜かれることなく相手の動きについていくフットワークや、相手の動きを読んできちんとコースに入るような、スタッツでは表れないようなことをきっちりできる選手のほうが「ディフェンス力がある」選手だと評価されることが多い。
 NBAのディフェンシブ・プレイヤー・オブ・ザ・イヤー(=最優秀ディフェンス賞。以下DPOY)とスティール王、ブロック王のリストを見比べると、興味深いことに、スティール王は滅多にDPOYに選ばれていない。スティールを狙いすぎる選手は、チーム全体で見たときに穴となることも多く、ディフェンダーとしての評価を下げることもあるということもあるのだろうか。最近では、14-15シーズンにDPOYに選ばれたカワイ・レナード(サンアントニオ・スパーズ)が平均2.3スティールでスティール王だったが、彼の前にスティール王でDPOYに選ばれた選手を探すと、20年以上前、1995-96シーズンのゲイリー・ペイトンまでさかのぼらなくてはいけない。
 ブロック王のほうは、スティール王に比べるとDPOYに選ばれることも多い。ブロックは直接シュートを阻むわけだから当然なのかもしれない。それでも、最後にブロック王がDPOYに選ばれたのは7年前。最近6シーズンのDPOYは全員が平均ブロック数1本前後の選手たちばかりだ。
 実際のところ、アドバンスド・スタッツが発展してきた最近では、ブロックやスティールだけでディフェンス能力を語ること自体が、もはや時代遅れと考えられるようになってきた。と同時に、ディフェンス力を数字で表そうと、様々な新しいスタッツも作り出されてきた。そういった新しいディフェンスのスタッツの話は、次のコラムで書いてみようと思う。

第9回目は、4月下旬を予定しています。お楽しみに。


宮地陽子さん略歴 :バスケットボールライター。ロサンゼルス近郊在住。NBAやアメリカで活動する日本人選手、FIBAワールドカップなどの国際大会を取材し、Sports Graphic Numberなどの雑誌や、NBA Japan, Web Sportivaなどのウェブサイトを中心に執筆活動中。

著書に『The Man ~ マイケル・ジョーダン・ストーリー完結編』(日本文化出版)、編書に田臥勇太著『Never Too Late 今からでも遅くない』(日本文化出版)がある。

*スタッツ/STATS:通常の得点、ファウルはもちろん、スコアシートからは拾えない、リバウンド、アシスト、ターンオーバー、スティール、ブロックショットなどの記録のこと。 英語のStatistics・統計学の略語STATSに由来。

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