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宮地陽子のスタッツ四方山話・第9回 ディフェンスはスタッツで測れるのか?② カワイ・レナードのディフェンス効率の数字の謎

 アメリカを拠点に、バスケットボールライターとして活躍中の宮地陽子さんのコラムをお届けします。

第9回目は ディフェンスはスタッツで測れるのか?② カワイ・レナードのディフェンス効率の数字の謎です。

宮地陽子さんの略歴、スタッツの解説を巻末に掲載しています。こちらもご覧下さい。


ディフェンスはスタッツで測れるのか?② カワイ・レナードのディフェンス効率の数字の謎

 先月のコラムで、スティール数やブロック数だけで個々の選手のディフェンス力を語るのは時代遅れで、最近では、代わりにディフェンス力を表すための新しいスタッツが使われるようになったと書いた。
 そういった新しいスタッツの中でも、よく使われるのがディフェンス効率だ。ディフェンス効率については、「第5回 NBAの流行 3ポイント・シュート② 3Pシュートが増えた理由」のコラムでも触れたが、改めて説明すると、相手チームの攻撃100回あたりで何点取られたかを表す数字だ。チームだけでなく、個々の選手にも適用できるスタッツで、その場合は、その選手が試合に出ている時間帯のチームのディフェンス効率で表す。個々の選手のスタッツから計算するのではなく、チーム全体のスタッツから、その選手のディフェンス力を測ろうという考え方だ。
 もちろん、このスタッツも万能ではない。何よりも重要なのは、信頼できる数値として使うためには、ある程度、まとまった試合数、出場時間数が必要だということだ。たとえば、先日終わったばかりのNBAの2016-17レギュラーシーズン中の選手のディフェンス効率のランキングを見ると、最もディフェンス効率の数字が低かったのはワシントン・ウィザーズのダニュエル・ハウスだと出てくる。

NBA選手スタッツ(2016-17レギュラーシーズン)

 「ダニュエル・ハウスって誰?」と思う人も多いかもしれない。それも当然だ。ドラフト外でウィザーズに加入した新人で、11月に1試合、50秒間出場しただけ。結局、3月には解雇されている。その1分弱の間の出場時間の間に相手チームが得点をあげなかったため、ディフェンス効率も0だったのだ。
 これは極端な例だが、出場時間が短い選手だと、その選手が出場した時に、偶々、相手のシュートが不調だったなどという偶然の要素が入り込む可能性も高くなる。先ほどリンクしたディフェンス効率のランキングも、よく見ると上位15選手は全員、シーズン通しての通算出場時間300分未満と、あまり出場時間が多くなかった選手ばかりなのがわかるだろう。
 そこで、出場試合数が40試合以上、1試合あたりの出場時間が20分以上という制限をつけると、1位がドレイモンド・グリーン(99.3点)、3位のルディ・ゴベール(100.6点)などと、実際に目で見たときにいいディフェンダーとして印象に残っていて、評価されている選手たちの名前が並ぶようになる。

NBA選手スタッツ(2016-17レギュラーシーズン)※40試合以上、平均20分以上出場

 ただ、それでも、このディフェンス効率は万能ではないと思わされる例がある。2014-15、2015-16と2シーズン続けてリーグのディフェンシブ・プレイヤー・オブ・ザ・イヤーに選ばれたカワイ・レナード(サンアントニオ・スパーズ)のディフェンス効率が104.0点なのだ。これは、先の40試合以上、1試合あたり20分以上という条件をクリアした全222選手の中で46位。トップレベルのディフェンダーとしては、期待外れの数字だ。

Kawhi Leonard1
 スパーズのチームとしてのディフェンス効率は100.9点とリーグ首位で、実際、ディフェンス効率でも、レナードより上に5人のスパーズ選手がランキングしている。今シーズンから、オフェンス面でもより大きな役割を担うことになったレナードのディフェンスが、昨シーズンほどではないという面もあるかもしれないが、それにしても、ディフェンス効率でレナードより上にランキングされているチームメイトのトニー・パーカーやパウ・ガソルのほうが、レナードよりディフェンス力が高いと考える人は誰もいないだろう。
 この不思議な数字、現象に対して、何人かの専門家や記者たちが、理由を見つけようと試みていた。その中でも評判になったのは、相手チームがレナードのディフェンスを無効にするために、レナードがマークしている選手をオフェンスに参加させず、コーナーで待機させて、4対4で攻撃する戦術を取っているという解説をしていたCBSスポーツの記事だ。

Kawhi Leonard is so great at defense, he’s actually hurting the Spurs

 この説明によって謎がすべて解決というわけではないが、確かに状況の一部は説明がつく。記事にもあるように、実際にそういった作戦を取るチームはあり、それは、レナードがディフェンダーとして評価されているからこそ取られる作戦なのだ。このことが証明しているのは、レナードのディフェンス力の高低ではなく、試合を見ずに、数字だけで選手の能力を測ろうとすることがどれだけ危険かということだ。
 それでも、NBAチームのコーチたちやGMたちが選手の査定をするときにスタッツを使い、どのチームもスタッツ専門家を雇うようになったのは、スタッツを用いることで、評価を均一化させ、また、寝る間も惜しんで映像を見るのではなく、もう少し効率よく選手の能力を見ることができるからだ。
 ディフェンス効率以外にも、マークしている選手の平均FG成功率との差から測る方法など、個々の選手のディフェンス能力を数字で表そうとする試みはいくつか出てきている。NBAでは、各アリーナの天井に取り付けられたSportVuのビデオカメラを使ったデータ分析で、ディフェンス時にマークしていた相手選手のFG成功率も出していて、それも一定の基準にはなるが、NBA以外のリーグでも簡単に応用できるスタッツではない。
 結局のところ、選手のディフェンス能力に関しては、他の能力以上に、いくつかある数字を組み合わせ、また実際に試合を見ての判断も適用して総合的に判断するしかないというのが現状だ。
 それでも、少し前まではディフェンス効率という考え方もなく、ブロックやスティールの数だけに捕らわれていたことを考えると、この世界も日々進歩している。今、この瞬間にも、ディフェンス能力を測るのに有効な新しいスタッツを作りだそうとしているスタッツ好きの人たちがいるはずだ。次はどんなスタッツが作り出されるのか、楽しみに待ちたい。

第10回目は、5月下旬を予定しています。お楽しみに。


宮地陽子さん略歴 :バスケットボールライター。ロサンゼルス近郊在住。NBAやアメリカで活動する日本人選手、FIBAワールドカップなどの国際大会を取材し、Sports Graphic Numberなどの雑誌や、NBA Japan, Web Sportivaなどのウェブサイトを中心に執筆活動中。

著書に『The Man ~ マイケル・ジョーダン・ストーリー完結編』(日本文化出版)、編書に田臥勇太著『Never Too Late 今からでも遅くない』(日本文化出版)がある。

*スタッツ/STATS:通常の得点、ファウルはもちろん、スコアシートからは拾えない、リバウンド、アシスト、ターンオーバー、スティール、ブロックショットなどの記録のこと。 英語のStatistics・統計学の略語STATSに由来。

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