バスケットボールのスコア、得点のスコアリングだけでなく、アシスト、リバウンド、スチール、ファウル、フリースロー、ターンオーバー等のプレーを入力し、STATS / スタッツ(統計データ)として記録するためのサイトです。

宮地陽子のスタッツ四方山話・第10回 マイケル・ジョーダンが外した決勝シュート~クラッチのスタッツ

アメリカを拠点に、バスケットボールライターとして活躍中の宮地陽子さんのコラムをお届けします。

第10回目は マイケル・ジョーダンが外した決勝シュート~クラッチのスタッツです。

宮地陽子さんの略歴、スタッツの解説を巻末に掲載しています。こちらもご覧下さい。


マイケル・ジョーダンが外した決勝シュート~クラッチのスタッツ

今から約20年前、マイケル・ジョーダンがこう語るコマーシャルがあった。

「僕はこれまで9000本以上のシュートを外してきた。(略)決勝シュートをまかされながら外したことが26回ある。人生で何度も何度も失敗してきた。だからこそ、こうして成功しているんだ」

 数多くの決勝シュートを決め、勝負強さで知られるジョーダンのイメージを逆手に取って、印象に残るいいCMだと感心したものだった。当時、ジョーダンは決勝シュートを外したという26回という数字がどれだけ正確なのか聞かれ、こう答えていた。

「たぶんもう少し多いんじゃないかな? 僕は言われたままに喋っただけだからね」

Michael Jordan1

 それなりに根拠がある数字だとは思うのだが、この頃は、CMの数字がどれだけ正確なのかを検証するためには、ジョーダンがそれまでに出場した全試合の映像を見直すか、あるいは全試合プレイバイプレイをチェックするぐらいしか方法がなく、さすがに、敏腕記者たちも、テレビのリサーチマンたちも、その正確性までは追及していなかった。思えば、当時は「勝負強い」という評価にしても、試合を見ての印象で語られることがほとんどで、それをスタッツで裏付けするということもない時代だった。

 あれから月日が流れ、テクノロジーの進歩とともに、NBAのスタッツも進化してきた。今では、誰でも見ることができるNBA公式サイトの中でも、様々な切り口でスタッツを見ることができ、条件を絞ってスタッツを選り抜くこともできるようになった。

 公式サイトにいくつもあるスタッツの分類のひとつに、”clutch”(勝負強さ)という項目がある。試合時間やショットクロックの残り時間、点差などの条件を絞ることで、特定な状況下でのスタッツを比較することができるのだ。

 たとえば「試合残り10秒未満、同点か点差2点以内で負けているとき」という条件でスタッツを絞って比較してみよう。シュートを決めれば同点、あるいは逆転という、まさに勝負を決するようなビッグショットとなる場面だ。

 2016-17レギュラーシーズンのスタッツを、この条件で絞ってみたところ、この状況下で最も多くシュートを決めた選手はカメロ・アンソニー(ニューヨーク・ニックス)で5本だった。11本中5本を決めており、成功率45.5%。プレッシャーがかかった場面だと考えると悪くない。次に多いのがラッセル・ウェストブルックで4本。13本中4本決めていて、成功率は30.8%だ。

Carmelo

Carmelo anthony1

 それでは、同じ条件で、1997-98のレギュラーシーズンのスタッツを見てみよう。ジョーダンがシカゴ・ブルズで最後にプレーしたシーズンだ。

 その状況下で一番多くシュートを決めたのはジョーダンとチャールズ・バークレー(フェニックス・サンズ)、そしてビン・ベイカー(シアトル・スーパーソニックス)の3人だった。それぞれ3本決めている。バークレーは5本中3本(60%)、ジョーダンとベイカーは6本中3本(50%)だ。

Charles

 もうひとつ、別な状況を想定してみる。

条件は「同点または1点リードで残り30秒以内」。相手チームにも攻撃チャンスが残る時間なので、落としたら逆転される可能性が出てくるような状況だ。

 この状況で、1997-98シーズンのジョーダンは5本打って、4本を決めていた(成功率80%)。ジョーダンと並んでトップの4本を決めていた選手がもう一人いる。勝負強いシューターとして知られるレジー・ミラー(インディアナ・ペイサーズ)だ。9本中4本を決めている(44.4%)。当時から試合を見ている人にとっては、どちらも状況が目に浮かんでくるのではないだろうか。

Michael

 ちなみに、2016-17レギュラーシーズンを同じ条件で絞ったときの表はこちら。最も一番多く決めたのは、ジョーダンと同じブルズ所属のバトラーで5本。7本打って5本と71.4%という高確率だった。

Jimmy

 残念ながら、現時点で、このクラッチ・スタッツをさかのぼって見ることができるのは1996-97シーズンまでで、1984年にNBA入りしたジョーダンのキャリアの大半は網羅されていない。また、時間や点差の条件で絞ることはできるが、それが「決勝シュート」と呼べるシュートすべてというわけでもない。そのため、「決勝シュートをまかされながら外したことが26回ある」というのが、事実に基づいているのかどうかの検証は、結局、20年たってもできなかった。

あと数年したら、さらに前のシーズンのクラッチ・スタッツも調べられるようになっているかもしれない。条件の絞り方も、さらに進化しているかもしれない。数字の検証はその時まで保留…と思う一方で、中にはきっちり検証しないまま、謎として残しておいたほうがいいこともあるのかもしれない、とも思うのだった。

6月はお休みを頂き、第11回目は7月下旬を予定しています。お楽しみに。


宮地陽子さん略歴 :バスケットボールライター。ロサンゼルス近郊在住。NBAやアメリカで活動する日本人選手、FIBAワールドカップなどの国際大会を取材し、Sports Graphic Numberなどの雑誌や、NBA Japan, Web Sportivaなどのウェブサイトを中心に執筆活動中。

著書に『The Man ~ マイケル・ジョーダン・ストーリー完結編』(日本文化出版)、編書に田臥勇太著『Never Too Late 今からでも遅くない』(日本文化出版)がある。

*スタッツ/STATS:通常の得点、ファウルはもちろん、スコアシートからは拾えない、リバウンド、アシスト、ターンオーバー、スティール、ブロックショットなどの記録のこと。 英語のStatistics・統計学の略語STATSに由来。

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