バスケットボールのスコア、得点のスコアリングだけでなく、アシスト、リバウンド、スチール、ファウル、フリースロー、ターンオーバー等のプレーを入力し、STATS / スタッツ(統計データ)として記録するためのサイトです。

宮地陽子のスタッツ四方山話・第11回 ハッスル・スタッツって何? ~目に見えない頑張りを数字化する

アメリカを拠点に、バスケットボールライターとして活躍中の宮地陽子さんのコラムをお届けします。

第11回目は ハッスル・スタッツって何? ~目に見えない頑張りを数字化する です。

宮地陽子さんの略歴、スタッツの解説を巻末に掲載しています。こちらもご覧下さい。


ハッスル・スタッツって何? ~目に見えない頑張りを数字化する

 6月26日、NBA史上初の『NBAアウォードショー』が開催された。これまで、レギュラーシーズンが終わった後、プレイオフの間に順次発表していた個人賞(アウォード)を、プレイオフ終了後にまとめてショー形式のセレモニーで発表し、テレビ中継したのだ。その時発表された個人賞の中には、MVPや新人王など伝統的な賞に混じって、聞きなれない新設の賞がいくつかあった。そのひとつが『ハッスル賞』だった。ハッスル賞はその言葉通り、リーグで一番ハッスルした選手に与えられる賞だ。そして、栄えある初代ハッスル賞受賞者に選ばれたのは、ヒューストン・ロケッツに在籍していたパトリック・ベバリー(6月28日にロケッツからロサンゼルス・クリッパーズにトレードで移籍)だった。実はこれは投票によって選ばれた賞ではなく、NBAが1年前から実験的に記録し始めた”ハッスル・スタッツ”を元に計算で出された賞だ。

HOUSTON, TX - APRIL 16: Patrick Beverley #2 of the Houston Rockets attempts to steal the ball from Russell Westbrook #0 of the Oklahoma City Thunder during Game One of the first round of the Western Conference 2017 NBA Playoffs at Toyota Center on April 16, 2017 in Houston, Texas. NOTE TO USER: User expressly acknowledges and agrees that, by downloading and/or using this photograph, user is consenting to the terms and conditions of the Getty Images License Agreement.  (Photo by Bob Levey/Getty Images)

 ハッスル・プレーを嫌がるコーチはいない。ただ、これまでは選手がハッスルしているかどうかは見た目の印象での評価に過ぎず、客観的なデータはほとんどなかった。それでも、少しでも数字化しようと、チームごとにアシスタントコーチらがチャージング回数やボールを弾いた回数を数えていたのがハッスル・スタッツの始まり。最初はあくまでチーム内での比較に過ぎなかった記録をリーグ全体に広げ、ハッスル・プレーとなる対象もより広く網羅したのが、NBAの『ハッスル・スタッツ』だ。2年前、2015年のサマーリーグで実験的に導入され、2016年プレイオフから公式に記録として残されるようになった。

  NBAのバスケットボール運営本部長を務めるキキ・バンダウェイは、サマーリーグでハッスル・スタッツを導入したときに、こう言っている。 「私の頃、そういったスタッツはすべてコーチたちが自分たちで記録していたんだ。ハーフタイムや試合後、そして練習中にも、コーチたちはルーズボールを何本追いかけたかという話をしていた。『前半だけで10本のデフレクションがあったのはよかった。それなら、そこまで怒ることもないか』といった感じにね」

 その後、2016年プレイオフで初めて公式にハッスルスタッツが記録され、ファンにも公開された。今回は、それをさらに一歩進め、NBAが記録しているハッスル・スタッツの王者を決めようという試みだった。

 NBAが”ハッスル・スタッツ”として記録しているのは、大きくわけて、次の5つだ。

①スクリーン・アシスト

 直接味方の得点につながったスクリーン

②デフレクション

 ディフェンス時に相手シュート以外のボールに触る(弾く)こと

③ルーズボールの確保

 ルーズボールを奪うこと

④チャージング

 相手のチャージングを取ること

⑤相手シュートに対するチェック

 相手のオフェンス選手がシュートを打とうとするときに、ボールの近くまで手をあげて守ること

 ハッスル賞の対象となるのはレギュラーシーズン出場50試合以上で、1試合平均出場時間15分以上の選手。たとえば毎試合2分ぐらいの出場選手なら、疲れることを気にせずに全力でハッスルできるから、ある程度のプレータイムがある選手を対象にしようというわけだ。全選手で比較するのではなく、まずはガード、フォワード、センターのポジション別に、1分あたりのスタッツで順位付けをする。その順位の数字を合計し、そのスコアによって選手の順位を決定。これで1位になったのがベバリーだったのだ。

 ちなみにトップ10選手は以下の通り(所属チーム名は昨季所属したチーム)

1. パトリック・ベバリー(ロケッツ)

2. ドレイモンド・グリーン(ウォリアーズ)

3. ステフィン・カリー(ウォリアーズ)

4. ゴージー・ジェン(ティンバーウルヴズ)

5. ノーレンズ・ノエル(シクサーズ→マブズ)

6. ネネ(ロケッツ)

7. ケネス・ファリード(ナゲッツ)

8. トニー・アレン(グリズリーズ)

9. タディアス・ヤング(ペイサーズ)

10. ポール・ミルサップ(ホークス)

 ハッスル賞を受賞したベバリーは、ルーズボールは全ポジションの選手の中でも1位。チャージングはガードの間で2位、全体で5位。また、デフレクションでもガードで9位(全体16位)、スクリーン・アシストもガードで7位、シュート・チェックはガードで19位だった。

 ドラフト2巡目指名から、しつこいディフェンスを持ち味にNBAで6シーズンサバイバルした彼は、他のスタッツで目立つところがあるわけではないが、脇役としてチームにとっては重要な戦力だ。これまで数字にならなかった功績が、こうやって数字として出され、さらに賞として選手の幅広い評価につながるのは選手にとっても嬉しいことに違いない。新たなスタッツが記録されたことによって裏方が表舞台に立つことができる。スタッツ文化の進化の功績のひとつだ。

次回以降のコラムは現在調整中です。決まり次第お知らせします。


宮地陽子さん略歴 :バスケットボールライター。ロサンゼルス近郊在住。NBAやアメリカで活動する日本人選手、FIBAワールドカップなどの国際大会を取材し、Sports Graphic Numberなどの雑誌や、NBA Japan, Web Sportivaなどのウェブサイトを中心に執筆活動中。

著書に『The Man ~ マイケル・ジョーダン・ストーリー完結編』(日本文化出版)、編書に田臥勇太著『Never Too Late 今からでも遅くない』(日本文化出版)がある。

*スタッツ/STATS:通常の得点、ファウルはもちろん、スコアシートからは拾えない、リバウンド、アシスト、ターンオーバー、スティール、ブロックショットなどの記録のこと。 英語のStatistics・統計学の略語STATSに由来。

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