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宮地陽子のスタッツ四方山話・第16回 エースは誰だ?~ユーセージ%(USG%)の誤解

アメリカを拠点に、バスケットボールライターとして活躍中の宮地陽子さんのコラムをお届けします。

第16回目は エースは誰だ?~ユーセージ%(USG%)の誤解 です。

宮地陽子さんの略歴、スタッツの解説を巻末に掲載しています。こちらもご覧下さい。


 

エースは誰だ?~ユーセージ%(USG%)の誤解

 バスケットボールのアドバンスド・スタッツが進化するなかで、多くの専門家たちが挑んできたことのひとつに、選手の価値をひとつの数字で表せないか、という試みがある。いくつかのスタッツが考え出されたなかのひとつが、今回取り上げるユーセージ%(USG%)だ。どんなスタッツなのか説明する前に、終わったばかりの17-18シーズンのレギュラーシーズン、およびプレイオフのリーグでのトップ5選手をあげてみよう(対象は1試合の平均出場時間が15分以上の選手)。

レギュラーシーズン

1 ジェームズ・ハーデン(ロケッツ) 36.1

2 ジョエル・エンビード(シクサーズ) 33.9

3 ラッセル・ウェストブルック(サンダー) 33.2

4 デマーカス・カズンズ(キングス) 32.4

5 レブロン・ジェームズ(キャブズ)31.6

レギュラーシーズンのユーセージ%

 

プレイオフ

1 ラッセル・ウェストブルック(サンダー) 38.2

2 ジェームズ・ハーデン(ロケッツ) 36.7

3 レブロン・ジェームズ(キャブズ) 35.2

4 ジョン・ウォール(ウィザーズ) 33.1

5 ドノバン・ミッチェル(ジャズ) 31.8

プレイオフのユーセージ%

James Harden

 ユーセージ%とは、チーム内でのオフェンス負担の大きさを表すスタッツだ。名前の横にある数字は、チーム全体の攻撃のうち何%をその選手が負担したかを表している。ざっくり言うと、チームにおけるオフェンス面でのエースが誰なのかを表す数字と言っていいだろう。

 ただこのユーセージ%は、その本当の意味がきちんと理解されず、誤解されることも多いスタッツでもある。

 ”usage”という英語は『使用』を意味する。この言葉が、誤解を呼ぶ原因のひとつなのかもしれない。何を『使用』することを測っているかということがわかりにくいからだ。

 バスケットボールの攻撃で『使う』ものとして多くの人が真っ先に思い浮かべるのは時間ではないだろうか。1回の攻撃は最長24秒と限られているので、ボールを保持している時間の割合がユーセージ%なのではないかと思われがちだ。確かにチーム内でエース級の選手はボールを持つ機会も時間も多い場合がほとんどだから、先の数字がボール保持時間だと言われてもあまり違和感がないかもしれない。ただ、実際にはユーセージ%の数字はその選手がボールを持った回数や時間とは無関係だ。理論的には、1回の攻撃で平均3秒しかボールを持たなかった選手だったとしても、ユーセージ率が高いこともありえる。

 実際には、ユーセージ%で測っているのは攻撃機会だ。バスケットボールの競技では、1回の攻撃が終わるのは①誰かがシュートを打ったとき(それが決まっても外れても)②ファウルされてフリースローを与えられたとき③ターンオーバーしたとき、だ。選手ごとに、こういった攻撃を終わらせる行為をした回数が試合全体のどれぐらいの割合だったのかを計算したのがユーセージ%だ。チームのエースなら、シュートを任されたり、攻撃される中でフリースローにつながるようなファウルをされたり、その過程の中でターンオーバーする回数も多いだろうということが前提となっている。

 ちなみに、NBA公式サイトに書かれているユーセージ%の計算式は以下の通りだ。

USG% = (FGA + (0.44 × FTA) + TO) / POSS

FGA=選手のフィールドゴール試打数

FTA=選手のフリースロー試打数

TO=選手のターンオーバー

POSS=(選手が出場中の)チーム攻撃回数

 前半部分の(FGA + (0.44 × FTA) + TO) は攻撃回数を計算するときに使われる数式だ。つまり、チーム全体の攻撃回数のうち、その選手が直接関わった攻撃はどれぐらいの割合か、ということを出しているわけだ。

 ここで、シュートは決めた数ではなく、打った数だということも頭に入れておきたい。つまり、ユーセージ%は、その選手がエースとして優秀かどうかを表す数字ではなく、あくまで、チーム内でどれだけ攻撃を任されているかの数字にすぎないのだ。

 また、理論上のバラつきがあるのも混乱の一因となっている。同じようにチーム内でのオフェンス負担率を表すための数字でも、専門家によって計算式が違うのだ。たとえば、シュートだけでなく、シュートにつながるアシスト本数も計算に含めるケース。オフェンスを作り出すという点で、シュートを打つだけでなく、アシストも考慮すべきだというわけだ。

 ちなみにNBA公式サイトでは、ユーセージ%はアシストなし、ユーセージ・レート(ユーセージ率)はアシストありの計算式が書かれているが、この言葉の使い方も、ウェブサイトやメディア媒体によって違うのでややこしい。

 アシストを入れるにしても、入れないにしても、ユーセージ%(あるいはユーセージ率)は、そのスタッツだけで選手の評価を表す数字にはなっていない。それでも、選手についての評価の話でユーセージ%の数字が使われることが多いことからも、バスケットボールにおいて、「シュートを打つ」「オフェンスを作り出す」ことがどれだけ重要なのかがうかがえる。

 また、当然ながら、この数字はチーム事情によっても変わってくる。他にシュートを打てる(オフェンスを作り出す)ことができる選手が少なければ負担が大きくなるし、他にもいれば数字は下がる。そのため、所属チームが違う選手を比べるときは、そういったチーム事情も考慮する必要がある。

 ユーセージ%ならではの色々な比較が考えられるが、その一例として、ケビン・デュラント加入前(2015-16)と加入1年目(2016-17)、加入2年目(2017-18)のゴールデンステイト・ウォリアーズのレギュラーシーズンにおけるユーセージ%トップ3選手を取り上げてみた。チームでのオフェンス主導権の推移がうかがえて興味深い。

USG%表

ゴールデンステイト・ウォリアーズのユーセージ%

レギュラーシーズン2015-16

レギュラーシーズン2016-17

レギュラーシーズン2017-18

 

本コラムは隔月の発行で、次回は8月下旬の予定です。お楽しみに。


宮地陽子さん略歴 :バスケットボールライター。ロサンゼルス近郊在住。NBAやアメリカで活動する日本人選手、FIBAワールドカップなどの国際大会を取材し、Sports Graphic Numberなどの雑誌や、NBA Japan, Web Sportivaなどのウェブサイトを中心に執筆活動中。

著書に『The Man ~ マイケル・ジョーダン・ストーリー完結編』(日本文化出版)、編書に田臥勇太著『Never Too Late 今からでも遅くない』(日本文化出版)がある。

*スタッツ/STATS:通常の得点、ファウルはもちろん、スコアシートからは拾えない、リバウンド、アシスト、ターンオーバー、スティール、ブロックショットなどの記録のこと。 英語のStatistics・統計学の略語STATSに由来。

 

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