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宮地陽子のスタッツ四方山話・第2回 元祖スタッツオタク、ハーベイ・ポラック(2016年8月22日掲載分)

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 また、システムのリニューアルに併せて、2016年7月から2018年9月に亘って掲載した宮地陽子さんのコラムを再掲載します。宮地陽子さんはアメリカを拠点にご活躍中のバスケットボールライターです。スタッツにまつわるコラムもお楽しみ下さい。再掲載第2回目は 元祖スタッツオタク、ハーベイ・ポラック です。 宮地陽子さんの略歴、スタッツの解説を巻末に掲載しています。こちらもご覧下さい。


 かつて、”スーパースタッツ”のあだ名で知られていた人がいた。NBAフィラデルフィア・セブンティシクサーズのスタッツ情報部門責任者だったハーベイ・ポラックだ。1946年のNBA創設時から、去年6月に93歳で亡くなるまで、フィラデルフィアのNBAチーム(ウォリアーズ&セブンティシクサーズ)でスタッツ記録を担当し、その功績を認められて、2002年にはライフタイム・アチーブメント賞部門でバスケットボールの殿堂入りをしている。  ポラックは、今のようにアナリティックス(スタッツ分析)が発展し、プロスポーツで欠かせないものになるよりずっと前、まだ手書きでスタッツをつけていた時代から、誰よりもスタッツに没頭していた人だった。何しろ、今、NBAでつけているスタッツの大半は、ポラックが考案したり、誰よりも早く記録として付け始めたのだ。  今のボックススコアに慣れた私たちには意外なことだけれど、NBAの創成期に記録として残されていたのは、各選手のフィールドゴール成功数と、フリースロー試投数と成功数、そして得点だけだった。それは大学も、設立されたばかりのNBAも同じだった。  しかし、根っからのスタッツオタクだったポラックは、それだけでは物足りなくなり、独自にスタッツをつけるようになったのだという。出場時間やアシスト、オフェンス&ディフェンス・リバウンド、ブロック、スティール、ターンオーバー、プラス/マイナスなど、すべてポラックが誰よりも早く記録に残していた。ハーベイの息子で、父を手伝い、スタッツ記録の道に入ったロン・ポラックは言う。 「ブロックを記録するようになったのは父だった。でも、他の人が同じことを記録するようになったら、父は新しい視点を取り入れていった。(ブロックした選手だけでなく)ブロックされた選手が誰なのかも記録するようになったんだ」  また、今では、オールラウンドな選手の指標として当たり前に使われるようになったトリプルダブル(3つのスタッツで二桁以上をあげること)という言葉を作ったのもポラックだった。 NBAも、大学も、少しずつ、ポラックのスタッツを採用し、記録するようになったのだから、間違いなくNBAだけでなく、バスケットボール界においてスタッツの草分け的な存在だ。  ポラックが2002年に殿堂入りしたとき、シクサーズの副社長だったデイブ・コスキーはこうコメントしている。 「今、私たちが見ているスタッツ・シートにあるような記録を取り始めたのはハーベイ・ポラックが最初だったと、何人かの関係者から言われた。今では標準になったようなことが、当初はリーグとしても記録していなかった。でも、ハーベイはそういったスタッツを記録しており、後からリーグのスタッツとして加えられた」  ポラックが毎年記録していたスタッツは、当初はシクサーズのメディアガイドに掲載されていたが、そのうち、スタッツ部分のページが増えてきたため、1994年から別の冊子として出すようになった。それが、スタッツ好きの間では有名な、『ハーベイ・ポラック・NBAスタッティスティカル・イヤーブック』だ。  いったいどんな本だったのか、中身を見てみたい人は、リンク先から2010-11シーズンの冊子がダウンロードできるので、ぜひチェックしてみてほしい。全336ページ、他の資料にはない数字や事実も多く、かなり見ごたえがある。何しろポラックはよく「私の本には余白はない」と、繰り返し言っていたのだ。 http://www.nba.com/sixers/media/pollack_statistical_guide_2010.pdf  たとえば、1987年からの全選手のダンク総数なんていうスタッツもある。ちなみに、1987年から2010年までの間に一番多くダンクしたのはシャキール・オニールで通算4207本。2位のデビッド・ロビンソンの1654本の倍以上の数字だ。オニールがNBAに入ったときのインパクトの大きさがうかがえるというものだ。  単にダンクの数を載せるだけでなく、ダンクの種類別に統計も取っている。2009-10シーズン中に最も多くダンクしたのはドワイト・ハワードで計197本。そのうち、叩きつけるスラムダンクは64本で、次は普通(plain)のダンクで50本、そしてアリーウープが49本と続く。197本もダンクしているのに、ランニングダンクが1本もなかったことも記録されている。  試合の勝敗には直接関係ない変わったスタッツもある。たとえば、タトゥーを入れる選手が増えてくると、ユニフォーム姿のときに見えるタトゥーが入っている選手を記録するようになった。選手が交代で試合に出てくるときに確認し、試合に出なくて、試合を通してウォームアップを着ている選手については、そのチームのトレーナーに確認するという徹底ぶり。そのポラックの記録によると、2009-10シーズンには189人の選手が見えるところにタトゥーを入れていたらしい。  その他にも、歴代の左利き選手を記録したり、同じ高校から出た選手を記録したり、記録できそうなこと、誰かが興味を持ちそうなことは何でも掲載されている。 それはそのままリーグの歴史であり、物語でもある。ポラックが亡くなったときに、前NBAコミッショナーのデビッド・スターンはこう言って、ポラックを讃えた。 「ハーベイは、このリーグのすばらしい歴史と、ものすごく大きな野望を体現していた人でした。彼のスタッツのおかげでゲームに新しい視点が出てきたこともありました。私たちは、細かなニュアンスまで理解する人を失いました。誰も彼の代わりにはなりません」

毎週金曜日に再掲載を予定しています。お楽しみに。


宮地陽子さん略歴 バスケットボールライター。ロサンゼルス近郊在住。NBAやアメリカで活動する日本人選手、FIBAワールドカップなどの国際大会を取材し、Sports Graphic Numberなどの雑誌や、NBA Japan, Web Sportivaなどのウェブサイトを中心に執筆活動中。著書に『The Man ~ マイケル・ジョーダン・ストーリー完結編』(日本文化出版)、編書に田臥勇太著『Never Too Late 今からでも遅くない』(日本文化出版)がある。 *スタッツ/STATS:通常の得点、ファウルはもちろん、スコアシートからは拾えない、リバウンド、アシスト、ターンオーバー、スティール、ブロックショットなどの記録のこと。 英語のStatistics・統計学の略語STATSに由来。

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